【1.始めよう設計者CAE!】
2000年初頭に設計者CAEが世に唱えられて以来多くの企業に関心を持たれてきました。そして今日の状況では設計者CAEがすでに定着していたり、推進の途上であったり、まだ着手してない企業など様々です。そこで設計者CAEをこれから推進される企業の方のために、原点に立ち戻って設計者CAEの特長について以下にご紹介します。
設計者CAEとは設計者自身が設計業務の一環として有限要素法等の解析を度々実施して設計検討を行って設計品質を向上させることです。では設計者CAE誕生の背景についてお話しします。
まずCAEという言葉はComputer Aided Engineeringの略で、1980年代初めに米国SDRC社が提唱したのが始めと記憶しております。筆者は当時CAEDS(SDRC社が開発したI-DEASの別名)の技術者としてSDRC社を訪問しCAEの概念を教わり非常に感銘を受けました。
当初のCAEは実施するに当り高度な専門知識と多くの労力が必要だったので専ら解析専任者の仕事でした。そしてCAEを行う目的は試作実験の結果に対するトラブルシューティングのためであり、製品開発プロセスの下流での利用が主でした。
やがてコンピューター性能の向上とともに大規模なシミュレーションを高速に行うことができるようになり、CAEはバーチャルシミュレーション(仮想実験)による実試作実験の置き換えまたは削減のための用途に発展しました。例えば自動車の衝突解析などで、これにより試作車数を削減し開発時間の短縮や開発コストの削減に貢献するようになりました。現在このようなCAEを施さずに航空機や自動車を開発するメーカーは世の中に皆無と言っても過言ではありません。これは製品開発プロセスの中流における重要な適用です。
一方設計者が行う設計作業もテクノロジーの進歩に伴い2D図面中心から3Dモデル中心へと変化しており、製品形状を3Dモデルで取り扱うことが多くなって設計者自身が3Dモデルをそのまま使って容易に解析を行う環境が整ってきました。設計検討のための簡単な解析をわざわざ解析専任者に依頼しなくても設計者自らが繰り返し行うことができるようになりました。これが設計者CAEの誕生です。
もう一つ設計者CAEが誕生した背景があります。それはCAEフロントローディングの必要性です。
多くの企業は競争に勝ち抜くために、省エネ性や耐久性の向上を目指して製品開発サイクルを短期間で回す必要がでてきました。試作を削減してかつ設計変更などの手戻りを極力減らして開発期間の短縮を図るためには、製品開発プロセスの上流において早期の問題抽出や最適化する設計を推進する必要があります。これがCAEフロントローディングであり、従来型の専任者CAEと新たな設計者CAEを調和して推進してこそ効果が発揮されます。
コンセプト編
1.設計者CAEの誕生とCAEフロントローディング推進2.設計者CAEのメリット(設計者CAEと専任者CAEの違い)
テクニカル編
3.線形解析と非線形解析の違い4.フォン・ミーゼス応力の真意5.特異点に気を付けよう6.計算結果の精度を保つメッシュサイズの目安7.仮想パーツの活用8.データマッピング9.ボリューム分割アドバンストメッシング10.1次要素と2次要素の使い分け11.CAEテンプレートの活用12.設計者CAEステップアップに向けて
株式会社ファソテック 技術顧問 CAEコンサルタント 藤田俊之
1974年 名古屋工業大学 機械工学科を卒業、川崎重工業に入社。10年間、化学プラントの耐震設計および航空機の強度・振動解析などの構造解析、さらに宇宙機器の開発に従事。1984年 日本アイ・ビー・エム入社。26年間にわたりCAEDS(I-DEASの別名)、CATIAアナリシスおよびSIMULIAなどのCAEツールを担当するSEおよびテクニカルセールスを歴任し、一貫してCAE技術畑を歩む。その後ダッソー・システムズを経て、2012年よりCAE推進をライフワークとするコンサルタントとしてファソテックに在籍し、現在に至る。
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